当院は日本消化器内視鏡学会の指導施設に認定されており、消化器内科・外科、呼吸器内科・外科の医師たちが横断的に密接に連携し合って患者さんにとって最良の治療法を決定し実施しています。当内視鏡センターは、早くから電子ファイリングシステムを導入し、高画質ハイビジョン対応内視鏡による白色光観察をはじめNBI観察、拡大観察に取り組み、さらに経鼻用細径内視鏡、超音波内視鏡、小腸カプセル内視鏡も揃え、消化器、呼吸器それぞれの分野で専門的知識と高度技術を持った専門医が精度の高い内視鏡診断と治療を提供しています。また、消化器・呼吸器疾患の内視鏡診断・治療に対する高度専門医療を常時提供する検査体制を敷き、消化管出血、化膿性胆管炎等の急性期疾患に対しても24時間体制で対応しています。
検査日・検査の流れ
検査 | 時間帯 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
上部消化管内視鏡 | 午前 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
午後 | ||||||
下部消化管内視鏡 | 午前 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
午後 | ○ | |||||
膵・胆道内視鏡 | 午前 | |||||
午後 | ○ | ○ | ||||
気管支鏡 | 午前 | |||||
午後 | ○ | ○ |
当院は、地域連携を推進しており、かかりつけ医から直接上部消化管内視鏡検査を予約していただくことが可能です。その場合は、当院への受診は検査当日1回のみで終了します。
下部消化管内視鏡検査においてもかかりつけ医から電話予約していただくことが可能です。この場合は、検査説明・下剤処方のための説明外来をまず予約していただき、その外来で検査日を決定いたします。
詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。
当院通院中の方で消化器(あるいは呼吸器)に何らかの症状を認め、内視鏡検査を希望される場合は、以下の手順で受診してください。
- 担当外来受診
- 内視鏡検査の予約
- 外来(または入院)での内視鏡検査の施行
- 再度、担当外来を受診し、内視鏡検査結果の説明
- 今後の(治療)方針の決定
実際の診療内容と特色について
当院内視鏡センターの最大の特徴は、消化器、呼吸器それぞれの分野で専門的知識と高度技術を持った専門医がそろい、かつ専門性において横断的に内科、外科とが密接に連携し合っていることです。従って、高度な内視鏡的診断・治療を提供できるだけでなく、いつでも外科的処置に移行できる環境が整っており、患者の皆様方にとって最良の治療法が決定されます。
当内視鏡センターにおける検査診療実績は、年間で毎年、通常上部消化管内視鏡検査6000件を超え、通常下部消化管内視鏡検査は2000件以上、内視鏡切除は上部(食道・胃)で100件前後、下部では700~800件に対して行ってきています。消化管出血に対する止血術も200~250件に上り、また、膵・胆道内視鏡検査数は200件近くに達し、今後益々増加していくものと考えています。気管支鏡検査数も300件を超えています。
検査内容
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上部消化管内視鏡検査(手技・治療)
- Helicobacter pylori感染のチェック
胃炎や消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)の原因としてHelicobacter pylori(以下ピロリ菌)が重要な役割を果たしていることが明らかとなっています。胃潰瘍患者の65~80%、十二指腸潰瘍の90%以上にこの菌が証明されており、除菌が潰瘍の治癒や再発の防止に重要です。また、ピロリ菌の感染は胃癌発症と関連があることが分かっています。ピロリ菌感染のチェックには内視鏡を使用する方法と使用しない検査方法がありますが、ほとんどの場合には内視鏡検査の所見によってその場でチェックを行うことができます。除菌の適応・方法については外来で相談させていただきます。ただし、感染チェックの適応は、検査医が判断します。
- 色素内視鏡
早期癌診断に重要な検査です。通常の内視鏡観察後にチューブを使って食道や胃に特殊な色素を散布します。食道癌ではヨード(ルゴール)を使うことが多く、胃癌ではインジゴカルミンという色素を使います。食道癌のスクリーニング検査としてヨード染色は必須の検査です。また、色素内視鏡により病変の広がりや深さを評価し治療法の選択も行います。色素散布は人体への影響はないと考えられています。ヨードで胸やけを生じることもありますが自然に軽快します。また、ヨード散布後にはデトキソールを散布し中和しています。
- 拡大内視鏡
通常の内視鏡検査に引き続き、内視鏡の手元についたレバーを操作しモニター上に病変部位を通常観察の85倍まで拡大して観察することができます。この拡大内視鏡による病変の表面構造や血管像の詳細な観察は、早期食道癌や早期胃癌の診断と治療法の選択に欠かせない検査となってきています。
- Narrow Band Imaging (NBI)内視鏡観察
NBIは通常の可視光域全体から、フィルターを用いて青(415nm)と緑(550nm)の二つの狭帯域光を照射し観察する新しい検査法です。当院でもこのNBIが可能な内視鏡装置を用いて検査を行っています。NBIは咽喉頭や食道癌のスクリーニングにヨード染色法と同様に適しています。このNBIを用いた拡大内視鏡観察は、早期食道癌・早期胃癌の診断・治療にきわめて有用な検査手技で、また、通常の内視鏡検査に引き続いて行うことが可能で患者さんの負担が軽い検査です。
- 早期食道癌・早期胃癌の内視鏡的治療
内視鏡検査により消化管の早期癌が多く発見されるようになりました。各種の癌治療ガイドラインにも示されているように、転移の可能性がきわめて低い病変に対しては内視鏡的治療が根治療法として施行されています。この治療法は通常の手術に比較し体に対する負担が少なく、食道や胃を切除せず消化管の機能が温存されるというメリットがあります。従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)に比較し、近年、開発された内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は広い病変の切除も可能で、当院では病変の大きさなどにより使い分けています。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
早期食道癌や早期胃癌に対して行う内視鏡的治療です。通常は粘膜内にとどまっている浅い病変が対象です。EMRは比較的小さい病変に行います。内視鏡を挿入し病変の直下に薬液を局注しスネアなどを用いて切除する方法です。ESDはEMRで一括切除できないような大きめの病変に対して行います。内視鏡観察後に病変の周囲にマーキングを行い局注後に専用のナイフで病変の周囲粘膜を全周切開します。そして病変の下の粘膜下層を慎重に剥離し切除していきます。出血や穿孔などの偶発症の危険性や術後の食事指導が必要となりますので入院にて行います。
- 上部消化管出血に対する内視鏡的治療
食道や胃・十二指腸からの大量出血(吐血、下血)は血圧低下や脈拍の増加をきたし、時に意識混濁などを生じショックといわれる危険な状態になることがあります。原因としては食道静脈瘤や胃・十二指腸潰瘍、癌などが挙げられます。救命処置を必要とすることが多く、原因検索と治療(止血)のために緊急内視鏡検査を行います。当内視鏡センターでは24時間体制で消化管出血に対する緊急内視鏡治療に対応しています。内視鏡的に止血できない時には、血管造影による血管塞栓術(IVR)や手術的に対処することもあります。
- 内視鏡的止血術・内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)・内視鏡的硬化療法(EIS)
消化管出血に対する緊急内視鏡検査で出血部位を確認します。引き続き止血術を行いますが、止血方法としては内視鏡クリップを用いる方法や出血部位に薬液(エタノールや20%グルコース+ボスミンなど)を注入し止血する方法などがあります。出血部位や程度に応じてそれぞれの方法を選択したり、または組み合わせたりして治療しています。食道静脈瘤に対しては出血する危険性が高いと考えられるときには、静脈瘤の病態を検査した後に内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)や内視鏡的硬化療法(EIS)を行っています。
- 上部消化管狭窄に対する拡張術
食道や胃に狭い部分が生じると食事が通りづらくなりつかえ感を生じます。さらに狭窄が進むと飲み込みが困難になり、食べた物を吐いたりします。原因として食道癌や胃癌、また手術後の吻合部狭窄などがあります。このような患者さんに対して内視鏡下に風船のようなもの(バルーン)を用いて拡張することにより、症状を改善させることができます。当院では食道癌を患った患者さんが多く、この拡張術をしばしば行っています。
- 内視鏡的胃廔造設術(PEG)
食道癌や頭頸部癌の患者さんで狭窄が強くなり食事が通らなくなることがあります。また、脳卒中などで嚥下機能が障害され飲み込みがうまくできなくなってしまうこともあります。このような時に胃瘻と言ってお腹の壁から胃内に管を挿入し栄養管理をしばしば行います。従来、手術的に行ってきた胃瘻造設術も、近年は内視鏡を用いて行うことが多くなり患者さんの負担軽減につながっています。当内視鏡センターでは紹介患者さんの胃瘻造設術も行い、紹介していただいた施設にお戻りいただいております。
胃廔造設術の施術の前には上腹部の手術既往や血液、凝固系の異常、内視鏡検査による胃内の粗大病変の有無やCT検査による胃周囲の異常の有無を確認し、安全な手技を心がけています。内視鏡検査を行い胃内に十分に送気したのちに触診と透過光を用いて安全な穿刺部位を確認し、鮒田(フナダ)式胃壁固定具で腹壁と胃壁を固定後にPEGキットを用いて胃瘻造設を行っています。
- Helicobacter pylori感染のチェック
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下部消化管内視鏡検査(手技・治療)
- 痛みの少ない大腸内視鏡検査
当院では患者さんにできる限り苦痛なく大腸検査を受けて頂く為に、軸保持短縮法による挿入、軽い鎮静剤の使用、内視鏡用炭酸ガス送気装置(UCR)を導入しています。他院で挿入困難といわれた方は、検査申し込み時にお申し出ください。経験豊富な内視鏡専門医が検査を担当いたします。
- 色素拡大内視鏡検査
約100倍のズーム機構を搭載した内視鏡を用い、腫瘍の表面構造を詳細 に観察します。拡大観察により、良性、悪性、早期癌の進行度などの診断が、一 般観察より正確に行うことが可能となり、内視鏡的治療の適応か、手術が必要か の診断が的確に行われます。一般に、インジゴカルミンやクリスタルバイオレッ トなどの薬液を用い観察を行います。
- NBI(Narrow Band Imaging)拡大内視鏡検査
オリンパス社によって開発された内視鏡検査で狭帯域光観察ともいわれる検査法 です。ヘモグロビンが吸収されるように狭帯域化された波長の光により、毛細血 管形態を強調して観察することが可能となり、色素拡大内視鏡検査と同様に、正 確な病期診断が可能となります。
- 内視鏡下ポリープ切除術(polypectomy)
良性腫瘍を含めた隆起性病変を内視鏡的に切除・治療する方法です。高周波スネ アと呼ばれるワイヤーを、投げ縄のようにポリープの根元にかけ、電流により切除します。
- 早期大腸癌に対する診断と内視鏡的治療
早期大腸癌に対しては拡大内視鏡検査等を用いた診断に基づき、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行っています。大きな病変や抗血小板薬の服用患者さん等の場合を除き、原則的には診断と同時に切除を行う為、入院の必要はありません。また、大腸早期癌に対する内視鏡的切開剥離術(ESD)が認可されている県内でも数少ない施設の一つです。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦な腫瘍の場合、上記polypectomyでは技術的に切除が困難であったり、腸 に穴を空けてしまう危険性が高くなってしまいます。これを解決する方法として、 腫瘍の粘膜下に生理食塩水等を注入し腫瘍を隆起させスネアを用いて切除を行う 方法がEMRです。20㎜以下の病変が本治療法の適応となりますが、20㎜以上で あっても一部の病変では何回かに分けて分割切除が可能です。
- 内視鏡的切開剥離術(ESD)
EMRでは摘除困難な大きさ、形態の早期癌に対して行われる治療法です。特殊な メスを用いて腫瘍周囲を切開し、腫瘍下層を剥離し一括して腫瘍を取り除きます。 胃においては一般に普及しつつある手技ですが。大腸壁は薄く技術的に難しい手 技の為、現在は一部の認可された施設で行われている治療法です。
ESD(内視鏡的切開剥離術)
- 痛みの少ない大腸内視鏡検査
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膵・胆道内視鏡検査(手技・治療)
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
ERCPとは内視鏡を口から挿入し十二指腸まで進め、ファーター乳頭という部位にある胆汁と膵液の共通の出口から細いチューブを入れ、胆管あるいは膵管に造影剤を注入することにより胆道(胆管、胆嚢)の病気や膵臓の病気を検査する方法です。胆道・膵それぞれの病気に対応したいろいろな内視鏡治療を行う上で基本となる検査です。
- 超音波内視鏡検査(EUS)、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
EUSとは内視鏡の先端に超音波(エコー)装置がついた特殊な内視鏡を口から挿入し、胃内あるいは十二指腸内から目的とする胆道(胆管、胆嚢)や膵臓を詳細に検査する方法です。さらに、胆道や膵臓に病変が存在した場合、その病変に対して針を直接刺して組織を採取し診断する超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)も積極的に行っています。治療方針の決定に重要な役割を果たしています。
- 総胆管結石の内視鏡的治療
総胆管という胆汁の流れる管の中に石が形成されることがあり、この場合、この結石が胆管内で嵌頓(詰まること)すると胆汁が流れなくなり閉塞性化膿性胆管炎という命に関わる重篤な症状を引き起こしてきます。さらにその場合、解剖学的理由から急性膵炎も同時に発症し非常に重症化することがあります。そこで、総胆管に結石がある場合はできるだけ早くその結石を胆管内から除去することが勧められます。以前は開腹手術をして結石を除去していましたが、最近ではほとんどの症例で内視鏡的に十二指腸側から結石を除去することができます。川崎病院でも結石の個数、大きさに関わらず、積極的な内視鏡的治療に努めています。
- 胆道狭窄に対する内視鏡的治療
胆管癌や胆嚢癌、また膵臓癌の場合、根治を目指す治療法は唯一手術となりますが、一般にこれらの癌に対する手術侵襲はとても大きく、必ずしも手術が一番いい方法とは限りらないことがあります。胆道狭窄による黄疸がみられ、かつ手術が適応にならない患者の方に対しては、内視鏡的にステントを積極的に挿入し症状の改善に努め、入院期間を極力短くし、良好なQuality of Lifeを維持できるよう最善を尽くします。また、胆道狭窄に炎症が波及した急性胆管炎を併発している場合は緊急検査として対応し、直ちに細菌により汚染した胆汁を外に出すドレナージ術を内視鏡下に施行しています。
- 悪性膵・胆管病変の診断
膵癌の多くは進行癌として発見され、発見時手術できないことも少なくなく、早期の小さい段階で発見することがとても大切です。そのため体外式超音波検査、CT検査、MRI/MRCP検査に加え、より精度の高い超音波内視鏡検査(EUS)が必要となってきます。また、膵嚢胞性疾患などの良悪性診断や胆嚢のポリープ病変の良悪性診断においても超音波内視鏡検査はとても重要であり、適切な手術適応を考える上で非常に有用な情報を与えてくれます。私たちは膵・胆道内視鏡(ERCP)検査時に細径の超音波プローブを胆管内、あるいは膵管内に直接挿入し、細かい病変の性状、広がりを観察(管腔内超音波検査:IDUS)することによって、より精度の高い診断を心がけています。
- 悪性十二指腸狭窄に対するステント留置
胃癌、十二指腸癌、膵・胆道癌では時に十二指腸に直接浸潤し、十二指腸内腔が狭窄ないし閉塞して食事が通らなくなってしまうことがあります。そのような場合、以前では全身麻酔下に開腹手術を行い胃と空腸のバイパスを作製する必要がありました。しかし、近年では内視鏡的に金属の網でできた太いパイプ状のステントを十二指腸内腔に留置することにより、狭窄部を拡げてまた食事ができるようにすることが可能となりました。適応症例を選ぶことにより良好なQuality of Lifeを実現することができます。
- 十二指腸乳頭部腫瘍
胆汁と膵液が十二指腸に出る開口部をファーター乳頭(十二指腸主乳頭)といいますが、この部分に腫瘍が発生することが稀ですが見られます。この場合、以前であれば膵頭十二指腸切除術という非常に大きな手術が全例になされていましたが、近年医療機器の発達により腫瘍の局在をより正確に診断することが可能となり、内視鏡的に切除できる症例が存在することが判ってきました。私たちは術前の検査を慎重に行うことにより、過大侵襲となるような膵頭十二指腸切除が避けられる症例に対しては、内視鏡的切除あるいは他の縮小手術といった段階的な治療戦略をとっています。
- 術後再建腸管に対する膵・胆道内視鏡検査
胃切除や膵頭十二指腸切除をはじめとした術後再建腸管に対する膵・胆道内視鏡検査は、解剖学的構造から内視鏡手技は困難とされてきましたが、バルーン内視鏡の登場により多くの症例で検査が可能となってきています。私たちもこのバルーン内視鏡を導入し、積極的に術後再建腸管に対する膵・胆道内視鏡検査に取り組んでおります。
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
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気管支鏡検査(手技・治療)
- 診断を目的とする気管支鏡
肺や気管気管支に生じた疾患の診断を確定するために行う気管支鏡です。対象となる疾患は、腫瘍性疾患(肺癌、良性腫瘍など)、炎症性疾患(結核、非定型抗酸菌症など)や、びまん性肺疾患(間質性肺炎、サルコイドーシスなど)など多岐に渡ります。 気管支鏡により行う検査には、経気管支生検(肺や気管支の組織を採取する)、擦過細胞診、(肺や気管支の細胞を採取する)、気管支肺胞洗浄(肺胞内の洗浄液を回収し分析する)などがありますが、病変の部位や疑われる疾患に応じて、もっとも診断の確定が得られやすい検査を行います。 当院では、通常の気管支鏡が挿入できる範囲の気管支より、さらに細い気管支に挿入できる細径気管支鏡や、気管気管支外のリンパ節を描出できる超音波気管支鏡を使用することにより、診断の精度を高めることに努めています。
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治療を目的とする気管支鏡
当院で行っている気管支鏡を用いた治療は、疾患別に以下のようなものがあります。
II 気管気管支狭窄
I 気管・気管支腫瘍
気管・気管支腫瘍は、通常手術治療が必要ですが、腫瘍の種類、部位、大きさ等によっては気管支鏡下の治療(切除)が行うことができます。切除は、気管支鏡下で使用できる電気メス(高周波治療)などを用いて行います。気管や気管支に狭窄を生じると、著しい呼吸困難を認めることがあります。根本的な治療には狭窄の原因となった疾患の治療が必要ですが、当面の呼吸困難症状の軽減のための対応として、気管支鏡を利用した「気道ステント治療」があります。 気道ステントとは、気管や気管支内に挿入できる大きさのシリコンまたは金属性の筒状の医療機器です。気管支鏡を用いて気道ステントを狭窄部に挿入し、狭窄を内側から拡げることにより症状を改善させます。
III 喀血喀血の程度や原因は、さまざまであり、原因疾患を特定して治療法を決定します。しかし緊急的に気管支鏡により止血処置を行うことがあります。
IV 異物除去誤って気管内に物を吞み込み、それが喀出できない際に、気管支鏡を用いて取り出します。
- 直視下経気管支生検・擦過細胞診、肺野末梢病巣生検・擦過細胞診
肺、気管・気管支の病変の確定診断を得るために、気管支鏡を用いて病変部からその一部(組織)、細胞、細菌などを採取します。採取には専用の鉗子(かんし:細いワイヤーの先に組織をつまみとる道具がついた器具)や針を使用します。病変が気管支鏡で見える範囲であれば、直接病変を見ながら採取します(直視下生検、擦過細胞診)。気管支鏡が到達できず病変が直接見えない場合は、X線透視をして病変の位置を確認しながら採取します(肺野末梢病巣生検・擦過細胞診)。
- 気管支肺胞洗浄
気管支鏡を用いて、肺の一部に生理食塩水を注入、回収し、回収した液(肺胞洗浄液)を分析することにより、診断を行います。
- 経気管支針生検
気管・気管支の外側に接して病変が存在している場合、気管・気管支の内側から病変に針を刺して、組織や細胞を採取します。 超音波気管支鏡を用いて、気管支の内側から外側の病変を確認しながら、行うこともあります。
- 気道ステント治療
気道ステントには、材質によりシリコン製のものと金属(形状記憶合金)性のものに大別されます。気道狭窄の原因疾患、狭窄の部位・程度により、患者さん毎に適するものを選択します。気道ステント留置の際には、局所麻酔で行う場合、全身麻酔で行う場合があり、これも患者さん毎にもっとも安全な方法を選択します。
- 診断を目的とする気管支鏡
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小腸カプセル内視鏡検査
- 小腸カプセル内視鏡検査
小腸カプセル内視鏡検査とは、カメラを内蔵した長さ26 mm×幅11 mmのカプセルを口から飲み込む小腸の検査です。小腸は全長6〜7 mと長く、従来は全小腸を苦痛なく検査することは困難でした。しかしこのカプセル内視鏡検査では、飲み込んだカプセルが消化管を通過しながら画像を撮影し、腰に付けた記録装置に撮影画像を無線で転送しますので、検査中も通常とほぼ同じ日常生活を送ることができます。検査時間は、個人差はありますが、約7時間です。カプセル内視鏡は使い捨てで、排便時に自然に排出されます。 検査の対象となる患者さんは、原因不明の消化管出血の患者さんやその他小腸疾患の疑われる患者さんです。ただしこの検査では、組織採取やポリープ切除、止血などの処置を行うことはできませんので、疾患が発見された場合にはバルーン内視鏡検査などによる確定診断や治療が必要となることがあります。
- 消化管開通性評価について
カプセル内視鏡は苦痛のない安全な検査です。しかし病気で消化管が狭くなっている(狭窄している)場合には、その場所をカプセル内視鏡が通過せず、腸閉塞を起こしたり、内視鏡や開腹手術でカプセルを取り出さなければならなくなったりすることがあります。「消化管開通性評価」とは、カプセル内視鏡と同一サイズの崩壊性(溶ける)カプセル(パテンシーカプセル)を使用して、カプセルが問題なく消化管を通過できるかどうかを確認するものです。パテンシーカプセルは、口から飲み込むと胃や腸の中を前進し、狭窄がなければ便とともに自然排出されます。消化管に狭窄の疑われる患者さんやクローン病患者さんの場合には、カプセル内視鏡検査をする前に、パテンシーカプセルによる消化管開通性評価を行う必要があります。
- 小腸カプセル内視鏡検査