川崎市南部地域における口腔(こうくう)外科の基幹的病院で、口や顎(あご)、顔面に現れるすべての疾患が対象となります。通常かかりつけ医院では治療が難しい病気を扱います。
例えば、親知らずの抜歯、顔・顎・口・歯肉の腫れや痛み、外科矯正治療(うけ口、出っ歯、ぐちゃぐちゃ歯列)、歯列矯正相談、口腔腫瘍(治らない潰瘍、痛み、出血)、顎関節症(あごの雑音や痛み)、顎顔面骨折、口や顎の切り傷、歯科インプラント治療(人工歯根)などです。
外来診療担当表
診療の特色
- 口腔外科学会認定専門医が軸となり、質の高い医療をめざします。
- 親知らずの抜歯やインプラント治療、補綴前処置、歯根端切除術から外傷、腫瘍に至るまで幅広い分野に対応しています。
抜歯(親知らず)
埋伏した親知らずの抜歯や過剰歯(余分な歯)の抜歯、かかりつけ医院では難しい抜歯、全身疾患のある患者さんの抜歯などを行っています。
なかでも、親知らずの多くは次の理由により抜歯が必要となります。
- 歯列の後方に位置し磨きにくいことや歯肉が被覆し汚れが停滞しやすいことより、周囲歯肉に炎症を起こしやすい。
- 1と同じ理由により隣の歯を含めた虫歯になりやすい。
- 埋伏している親知らずは、隣の歯を押すことにより歯列不正の原因となる。
- 歯の周囲に嚢胞(のうほう)が存在することがあり、無症状のまま周囲の骨を溶かしながら拡大する。
親知らずの抜歯後の合併症には腫脹や下唇知覚鈍麻がありますが、当科では極力抑えるように努めています。詳しくは外来担当医にお聞き下さい。
親知らずの歯根は顎骨の中を通る神経と近いことが多く、CT写真で位置を確認しながら抜歯を行っています。
深く埋伏した親知らずの抜歯や全身疾患があり外来での抜歯がご心配な患者さんは、短期間入院し抜歯を行うことも可能です。
過剰歯は歯列不整などの原因となるため、多くの場合、抜歯が望ましいです。
当院では骨の中に埋伏した過剰歯の抜歯を低侵襲で行うため、抜歯のアプローチに
ついて検討を重ねています。
Evaluation of the surgical approach based on impacted position and direction of mesiodens.
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology. 35:23-29, 2023
歯科インプラント(人工歯根)治療
歯を失った場合には、ブリッジと入れ歯、そして歯科インプラントの3つの歯をつくる方法があります。歯科インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨にインプラントを埋め込み、その上に人工の歯を作製する方法です。入れ歯に比べ強い咬む力が得られ、ブリッジとちがい隣の歯を削る必要がありません。歯科インプラントを利用した入れ歯の治療を行うこともありますが、入れ歯の維持力や咬む力を増加することが期待できます。
顎の骨が高度に吸収している場合には、そのままインプラント治療を行うことはできません。そのため、骨移植や上顎洞底挙上術などの骨造成(骨をつくること)が必要となります。かかりつけ歯科医院の先生方と連携しながら、骨造成からインプラント埋入および上部構造作製まで行っております。まずは、かかりつけ歯科医院の先生にご相談ください。
嚢胞(のうほう)
嚢胞は、内部に液体が貯留した袋のことです。
顎の骨の中や口唇、舌、頬粘膜、口腔底などに生じます。
顎の骨の中に生じる嚢胞には、炎症により生じた膿の袋である歯根嚢胞と埋伏歯に関連して生じた含歯性嚢胞などがあります。どちらも無症状のまま大きくなり、レントゲン写真で偶然見つかることがあります。
手術の方法は、症例に応じて摘出術や開窓術(窓開けをし圧力を逃がす手術)を行っています。嚢胞の種類や大きさ、年齢、原因歯の状態などにより使い分けています。
歯根嚢胞では、原因歯の処置が必要となります。歯根端切除術(歯の根の先を切断し特殊な材料により処理を施す方法)を行い、抜歯をせず保存する方法もあります。
小さな嚢胞は外来通院で局所麻酔にて摘出することができますが、大きな嚢胞では入院し全身麻酔下に手術が必要です。
顎変形症・うけ口・出っ歯・ぐちゃぐちゃ歯列
骨格性のうけ口、出っ歯および非対称などの「咬み合わせの異常」に対して、矯正歯科での術前矯正治療の後に外科的矯正治療(手術)を行っております。また、当院では矯正歯科の先生方と1例ごとに綿密な治療計画立案を行い、術前に撮影したCTデータをもとに顎の実物大立体モデルを作製しシミュレーションを行っています。
顎機能診断施設の指定を受けた医療機関との連携により、顎変形症の外科手術を保険診療にて受けることができます。また、手術および入院費用に関しては、高額療養費制度を活用することができます。
アンカーインプラント(歯を動かすための固定源)の埋入手術や埋伏歯の開窓術(埋伏している歯を引っ張り出すためのボタンの装着手術)などの歯科矯正関連の手術も行っています。これらは矯正歯科の先生方と連携して行います。
アンカーインプラントはアンカースクリューだけでなく、アンカープレート(Skeletal Anchorage System)の埋入手術も行っています。
また、犬歯などの永久歯が生えてこない場合でも、開窓術により埋伏している歯を活かすことができるかもしれません。矯正治療を含め、埋伏歯の治療をご検討されている方はご相談ください。
歯根端切除術
歯根嚢胞では原因歯の処置が必要となりますが、歯を保存できる場合には歯根端切除術を行っています。歯根表面の肉芽組織と感染歯質を確実に除去し、緊密な逆根管充填を行うよう努めています。 根管治療されていない歯は、術前に根管充填をお願いしております。
地域医療機関の先生方へ
当科では、親知らずの抜歯やインプラント治療、補綴前処置、歯根端切除術から外傷、腫瘍に至るまで幅広い分野に対応しています。毎月250人程度の患者さんが当科を初診となり、このうち150人以上がご紹介いただいた患者さんです。多くの患者さんをご紹介いただき深く感謝申し上げます。地域の先生方のお役に立てますよう、口腔外科学会認定専門医が軸となり、質の高い医療をめざし日々研鑽しています。また、かかりつけ医院の先生方と密に連携をとり、患者さんに納得していただける医療を提供したいと考えています。
責任者
部長 鬼澤 勝弘